2011年3月5日土曜日

善根寺檜皮大工

善根寺檜皮大工の伝承と活動
―発見された棟札と向井家文書から探る彼等の実像―


はじめに

春日神社には古くから伝えられた檜皮大工にまつわる伝承があります。それは単なる伝承ではなく、檜皮大工の存在は確認されています。東大阪市内の諏訪神社の江戸時代の棟札に「善根寺檜皮大工」の名があり、それが彼等の実在と活動を証明する唯一のものとなっていました。

神社の北側は大谷川という川が急峻な谷を形成し、その谷あいに「新聞文化資料館」があります。八〇数年にわたって新聞史料と郷土歴史資料を収集されている中谷作次氏が私費で運営されている資料館です。平成八年にこの資料館を訪れた筆者は貴重な史料に出会ったのです。 

それは和歌山県有田郡の広八幡宮の本殿棟札の写真でした。その表面に善根寺檜皮大工の名があったのです。しかも年号は永禄一二年(一五六九)という中世のものでした。
この棟札が中世における善根寺檜皮大工の存在を証明するものとなりました。それは奈良時代にまつわる善根寺檜皮大工の伝承に繋がる可能性も考えられるものであり、歴史的関心を強く惹かれるものでした。

この思いもかけない発見によって、さらに他にも棟札が遺されているのではないかと心躍る思いで調査を始めました。ちょうどこの時期に、国立歴史民俗博物館から『社寺の国宝重文建造物等棟札銘文集成』が刊行されていたので早速調べてみました。

その結果、新しい近世の四枚の棟札を発見することになりました。この棟札と、地元に遺されていた史料から、三〇〇年にわたる彼等の活動の記録が明らかになりました。

この史料をもとに彼等の活動の軌跡を追い、その伝承と歴史的な事象との関連を探り、伝承が長い年月語り伝えられた歴史的背景にも迫ってみたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿